1.建設業許可の範囲
建設業の許可
- 建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業の許可を受けなければなりません。
- 「軽微な建設工事」とは、工事1件の請負代金の額が建築一式工事以外の建設工事の場合にあっては、500万円未満、建築一式工事にあっては1、500万円未満又は延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅の工事をいいます。
- 許可を受けないで、建設工事の請負の営業を行うと、無許可営業となり、罰せられることになります。
2.建設業の許可業種
建設業の許可は以下に示す28業種ごとに取得する必要があります。
業種(28業種) | 建設工事の例示 |
土木工事業 | トンネル・橋梁・ダム・護岸・道路工事 |
建築工事業 | 建物の新築、建築確認を要する規模の増改築工事 |
大工工事業 | 大工・型枠・造作工事 |
左官工事業 | モルタル・吹付け・とぎだしなどの左官工事 |
とび・土工工事業 | とび工事・ひき工事・解体・コンクリブロック・土工事 |
石工事業 | 石積み・石張り工事 |
屋根工事業 | 屋根ふき工事 |
電気工事業 | 発電設備・送電線・構内電気設備・信号設備工事 |
管工事業 | ダクト・給排水設備・冷暖房設備・浄化槽工事 |
タイル・れんが・ブロック工事業 | タイル張り・レンガ積み・石綿スレート張り工事 |
鋼構造物工事業 | 鉄骨・鉄塔・広告塔・貯蔵用タンク工事 |
鉄筋工事業 | 鉄筋加工組み立て・ガス圧接工事 |
ほ装工事業 | アスファルト舗装・コンクリート舗装・路盤築造工事 |
しゅんせつ工事業 | 港湾・河川等のしゅんせつ工事 |
板金工事業 | 建築板金・板金加工取付け工事 |
ガラス工事業 | ガラス加工取付工事 |
塗装工事業 | 一般塗装・溶射・ライニング・路面表示工事 |
防水工事業 | アスファルト防水・モルタル防水・シーリング工事 |
内装仕上工事業 | インテリア・壁貼り・床仕上げ・畳・家具工事 |
機械器具設置工事業 | プラント施設・遊技施設・舞台設備・サイロ設置工事 |
熱絶縁工事業 | 冷暖房設備・動力設備等の熱絶縁工事 |
電気通信工事業 | 電気通信線路・データ通信設備・情報制御設備工事 |
造園工事業 | 植栽・地被・地ごしらえ・公園設備工事 |
さく井工事業 | 井戸・温泉・さく孔・石油・天然ガス掘削工事 |
建具工事業 | 金属建具・サッシ・シャッター・自動ドア取付工事 |
水道施設工事業 | 取水施設・浄水施設・配水施設工事 |
消防施設工事業 | 消火栓・スプリンクラー・消火設備・火災報知器工事 |
清掃施設工事業 | ごみ処理施設・し尿処理施設工事 |
3.大臣許可と知事許可
- 建設業を営もうとする者が、2つ以上の都道府県の区域に営業所を設ける場合は国土交通大臣の許可が、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設ける場合は都道府県知事の許可が必要となります。たとえば、沖縄に本店を置いて東京、大阪に支店を設けるような場合です。
- 営業所とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約の見積、入札、契約の締結を行う事務所等、建設業に係る営業に実質的に関与するものをいいます。単に登記上本店とされているだけで、実際には建設業に関する営業を行わない店舗や、建設業とは無関係な支店、営業所等は、ここでいう営業所には該当しません。
- 大臣許可、知事許可を問わず、営業の区域又は建設工事を施工する区域についての制限等はありません。例えば、沖縄県知事が許可した業者は、建設工事の施工は全国どこでも行うことが可能です。
4.一般建設業の許可と特定建設業の許可
建設業の許可は、一般建設業の許可と特定建設業の許可に区分して与えられます。特定建設業の許可は、発注者から直接請け負う一件の建設工事について、下請代金の額が3、000万円(建築工事業については、4、500万円)以上となる下請契約を締結して施工しようとする者が受けるものであり、その他の者は、一般建設業の許可を受けることになります。なお、「特定」と「一般」は1業種について両方とることはできません。
発注者から直接請け負う請負金額については、一般・特定に関わらず制限はありません。また、発注者から直接請け負った1件の工事が比較的規模の大きな工事であっても、その大半を自社で直接施工するなど、常時、下請契約の総額が3、000万円未満であれば、一般建設業の許可でも差し支えありません。
下請代金の制限は、発注者から直接請け負う建設工事(建設業者)に対するものであることから、下請負人として工事を施工する場合には、このような制限はかかりません。
5.個人と法人
建設業許可をとれるのは、「法人」、「個人」を問いません。「法人」というのは、株式会社、有限会社、合資会社、協同組合、協業組合などをさします。協同組合や協業組合は、その実質が事業主の集合体であるため、1つの団体として本当に許可を受けるための要件を満たしているのか、指名入札の二重参加の脱法行為に利用されないかなどの問題点があり、窓口の方の審査も厳密なようです。それに対し「個人」とは、いうまでもなく個人の事業者のことです。
6.許可の要件
建設業の許可を受けるためには、次の要件を全て満たしていることが必要です。
(1)経営業務の管理責任者としての経験がある者を有していること
申請者が法人の場合は常勤の役員のうち一人が、個人の場合は本人又は支配人のうち一人が、許可を受けようとする建設業に関し、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有していること。又は、許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し、7年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有していること。
(2)専任の技術者を有していること
許可を受けて建設業を営もうとする全ての営業所ごとに、一定の資格・経験をもつ専任の技術者を置くこと。なお、土木工事業、建設工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、ほ装工事業、造園工事業の7業種は指定建設業として指定されており、特定建設業の許可を受けようとする場合は、国土交通大臣が定める国家資格者を営業所に置かなければならない。
(3) 請負契約に関して誠実性を有していること
申請者が法人の場合は、その法人、役員、支店又は営業所の代表者が、個人の場合は、本人又は支配人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
(4)請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有していること
一般建設業の許可を受ける場合、次のいずれかに該当すること。
(イ) 自己資本の額が500万円以上であること。
(ロ) 500万円以上の資金を調達する能力を有すること。
(ハ) 許可申請直前に過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること。
特定建設業の許可を受ける場合、次のすべてに該当すること。
(イ) 欠損の額が資本金の額の20%を越えていないこと。
(ロ) 流動比率が75%以上であること。
(ハ) 資本金の額が2、000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4、000万円以上であること。
6.許可申請の手続き
(1)提出部数
知事許可:正、副、控の3部(副及び控については写しでも可)
大臣許可:正、副(副の部数は営業所の所在する都道府県の数分)、控(副及び控については写しでも可)
※注意>提出の際は「許可申請書及び添付書類一覧」の様式の順に並べて綴って下さい。(別紙1~第13号様式が一番下になります)
(2)許可手数料
知事許可
・新規の許可手数料 9万円(沖縄県証紙)
・更新又は追加手数料 5万円(沖縄県証紙)
大臣許可
・新規の許可手数料 15万円(登録免許税の領収証)
・更新又は追加手数料 5万円(収入印紙)
一般と特定を同時に申請する場合、知事許可の新規では18万円、更新では10万円、業種追加では10万円かかります。
7.建築工事業者以外がわざわざ建設業許可を取得するメリットとは?
比較的業務単価の高い、建築工事業者にとって建設業許可は必須だと言えますが、それ以外の建設業の業種で何故、敢えて許可を取得する必要性があるのでしょうか?
請負代金額が500万円に満たない工事がメインであれば敢えて許可を取得する必要性は乏しいかもしれません。しかし、許可を取得することによっては以下のようなメリットが得られますので、ビジネスの躍進にとって一定の効果が得られると言えます。
(1)社会的な信頼度のアップ
大手建設業者では下請業者を選ぶ基準に建設業許可業者であることを必須とする場合もあります。故に、建設業許可を取得すると、元請企業からの仕事が受注し やすくなります。更に、最近の傾向として、下請業者が建設業許可の登録をしていないと、仕事を発注しない元請企業が増えています。建設業許可を取得しているということは与信の証でもあり、工事発注者も信頼のできる下請業者に仕事を依頼したいのは当然のことと言えます。
また、営業名刺や会社案内に建設業の許可番号があるのとないのとでは、取引先の風当たりも違ってきますので、ブランド力向上にも一躍買ってくれま す。
(2)公共工事入札のスタートラインに立てる
公共工事を請け負うためには、まず建設業許可を取得し、その後、経営事項審査を受け、行政庁毎に入札参加資格を取得することで、入札に参加し、公共 工事を直接請け負うことが可能になります。現在は、建設業許可取得業者の約3分の1が経営事項審査を受けて、公共工事に参入を果たしています。
(3)金融機関からの融資が有利となる
融資の条件に、建設業許可業者であることを求められるケースがあります。政府系の公的融資機関や銀行からの融資を受ける場合には、許可を取得していること は、大きなメリットとなるでしょう。これは金融機関の担当者も述べていることです。
(4)金額的制限がなくなるため、大きな仕事を受注することができる
建設業許可を受ければ1件あたり500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上)の工事を請け負うことができるようになりますので、 事業を拡大することが可能となります。
裏を返せば、小規模閉鎖的な事業者で、事業拡大の必要性も乏しく、現状の取引先だけで十分に業務として成り立っている場合には建設業の許可はなくて も全く問題はないでしょうが、あって困るものではありませんので「与信」のために持っておいて損することはないでしょう。
コメントを残す